私の子どもの頃の一番の友だちはソフトビニール製の怪獣人形だった。その足の裏には必ず「MS」か「ブルマァク」という名が刻印されていた。祖父に買ってもらった「怪獣パチンコサッカー」というゲームにも「ブルマァク」の名が。怪獣たちは塗料が剥げ、パチンコサッカーは怪獣たちの足が折れてしまった。怪獣の人形は今でも大切に置いてある。
それらを生み出し、作り上げた「マルサン」(後に「マルザン」と改称)、その倒産後に社員たちが作った「ブルマァク」という二つのおもちゃ会社がたどった軌跡をたどったのが本書である。
戦後、ブリキのおもちゃで成功しプラモデルを開発して業績をのばした「マルサン」だが、スロットレーシングで失敗し、起死回生となった怪獣ソフビもブームが去ると売れ残ってしまい結局倒産してしまう。いしづき※三郎たち三人の社員は新たに「ブルマァク」を起こし、再び怪獣ソフビで一世を風靡する。しかし、「マルサン」の失敗を繰り返してしまった「ブルマァク」はミラーマンの人気が伸び悩んだのをきっかけに失速、ついに倒産してしまう。
おもちゃ作りというテーマをもとに、ブームというものの本質をあらわにし、それでも良質の物はどんな形でも残るものなのだということを示している。そして、私が子どもの頃に夢中になった怪獣ソフビを作っていた人たちの熱い思いを伝えてくれているのが、なによりも嬉しい。そして何より嬉しいのはいしづき三郎さんがいまだ現役で新しいおもちゃを送り続けてくれていることである。
※いしづきという字は金尊と一字で綴るけれど、標準辞書に入っていないのでひらがなで表記しました。
(2001年6月27日読了)