東京の街に正体不明の怪物〈ゼロ〉が登場し、人々を惨殺していく。大学生七瀬誠は先輩である刑事浅岡は夜の新宿で〈ゼロ〉と遭遇した。浅岡は〈ゼロ〉に殺され、誠は〈ゼロ〉の血に体を浸してしまう。彼らを救ったのは、短いジャケットにミニスカート、ハーフブーツといういでたちの謎の美女、水原玲香。気を失った誠は厳重な検査のもと、玲香の監視下におかれる。玲香は〈ゼロ〉を専門に戦う〈ゼロハンター〉であった。誠が再び〈ゼロ〉と出会った時、彼の体の内部からこれまでとは違った感覚が沸き上がり……。誠は浅岡の復讐を果たすため、〈ゼロ〉と対峙する。
〈ゼロ〉とは何物なのか、それがはっきりしないまま激しいアクションシーンへと突入し、敵を倒した時点でストーリーが終わる。ここで作者が描きたかったのはなんだったのだろうか。正体不明の物へのいいしれぬ恐怖か? 気弱な青年が戦士と変身していく心理的な葛藤か? それとも戦いの中で惹かれあっていく男女の物語か?
的が絞り切れていないのがこの作品の弱点だろう。作品に込められたテーマをもっとストレートに打ち出すべきなのではないだろうか。そうでなければただ怪物が出てきて気弱な青年がそれに対抗できる力を持って戦って……というだけに終わってしまう。エンターテインメントに理屈はいらないかもしれない。しかし、読者に何を伝えたいかというものは必要なのではないだろうか。
(2001年6月30日読了)