清純派の高校生、吉川冬歌の前に、かっこいい転校生榊が現れる。幼なじみの近藤吾郎はそんな冬歌と榊の関係にやきもき。やがて彼女のことを〈アサン〉と呼ぶ謎の女性が現れさらっていこうとする。彼女を助けたのは榊。しかも彼は空中を走っている! 実は榊は宇宙人で、高次元の精神体である〈ヴァレリー〉という存在をその身に宿した聖母〈アサン〉を守る〈アサンの守護者〉の一人なのだという。そして、冬歌こそ久々に宇宙に降臨する〈ヴァレリー〉を胎内に宿していたのだ。彼女を狙うのは〈ヴァルデの凶星〉と名乗る兇悪な宇宙人たち。冬歌と〈ヴァレリー〉をめぐり〈アサンの守護者〉と〈ヴァルデの凶星〉の激しい戦いが始まる。それに銀河連邦の内閣調査部員も加わり、戦いの帰趨は混沌としてくる。
平凡な少女が聖母となり、宇宙規模の戦いが繰り広げられるというアイデアは悪くない。しかし、結局地球上で怪獣が暴れまわるだけに終わってしまう。せっかくスケールを大きくできる設定をうまく生かし切れていないように感じるのだ。さらにいえば、本書で作者が読者に読ませたいポイントがつかめないのだ。女性にひそむ母性の美しさを強調したいのか。怪獣同士のアクションを文章という形で表現したかったのか。作者の狙いがよくわからない。
なんというのだろう。作者が女性に抱いている古臭い理想像にちょっとついていけない部分もある。本書の読者層もまたそういう保守的な女性観を持っているのだろうか?
(2001年7月1日読了)