中学生時代からの友人、響真吾の自殺。動揺する一之瀬武士に残されたものは一通の遺書。そこには、真吾がいじめの被害にあっていたことが綴られていた。恋人の真田瞳の協力で真吾をいじめていた3名の存在をつきとめた武士だったが、彼らは〈夜魔〉と名乗る猟奇集団のメンバーであった。彼らは打ち捨てられたマンションを根城に、抵抗できないものをいたぶって快感にひたる集団で、真吾もその被害者の一人だったのだ。復讐を決意した武士だったが、瞳の説得で一度はあきらめかける。しかし、しらみつぶしにインターネットのサイトを探した彼は、『マンイーター』という復讐請負いのホームページを発見し、真吾を自殺に追い込んだ3人への復讐を依頼する。その一人、津村は死体となって発見されたが、それは人間業とは思えない殺され方であった。『マンイーター』からの連絡で〈夜魔〉の根城に足を運んだ武士は、次の一人、宇田が惨殺される場面を目撃し、この復讐を止めようとする。しかし、動き出した『マンイーター』は止まらない。武士は最後の一人、野木の殺害を阻止できるのか……。また、『マンイーター』の正体は……。
作者のこれまでの幾分のんびりした作風とはがらりと変わった、スプラッタ風味のホラー小説である。本書で強く感じられるのは、死というものに直面した若者の動揺であり、生というものを意識した時の若者の正義感である。弱者をいたぶる者たちの描写にいささか類型的なものを感じないではない。また、『マンイーター』の描写ももっと不気味なものにしてもよかったのではないかと思う。ホラーとして読んだ場合、より以上に徹底してほしい部分は多い。より徹底してホラー色を打ち出せば、主人公の生と死に対する感情の変化もまたこれ以上に鮮明になったと思うのである。
作者が新しい領域に挑戦した意気込みは買いたい。次にホラー作品を発表する機会があれば、どこまで踏み込んでいけるかに注目して読んでみたいのである。
(2001年7月1日読了)