子どもの頃、今は亡き祖父にせがんで連れていってもらった映画『猿の惑星・征服』は、ちょっとした衝撃だった。そのあとテレビ放映された『猿の惑星』『続・猿の惑星』『新・猿の惑星』もまた、幼かった私にSFの面白さを教えてくれた。『最後の猿の惑星』だけは話をまとめようとして凡作に終わっていたけれど。原作のピエール・ブール著『猿の惑星』(創元推理文庫版)は大学に入ってから同人誌の企画でつくった〈文庫チェックリスト〉のために読んだ。原作は優れた風刺小説であり、映画は文明批評SFであった。
本書はティム・バートン監督による新しい映画『猿の惑星』のノヴェライゼーションである。映画を見る前にストーリーを知ってしまうのはどうかと思ったが、『猿の惑星』がどのように料理されているか興味津々であったので、とにかく読んでみた。
宇宙飛行士レオ・デイビッドソンは任務の途中に磁気嵐に巻き込まれ、猿が支配する惑星に不時着した。そこで猿の人間狩りに遭遇した彼は、奴隷商人リンボーに引き渡される。しかし、人間と猿の平等を訴えるチンパンジーの娘、アリによって救われた彼は、元の宇宙船に戻ろうと試みる。猿の町を脱出し自分の乗ってきたポッドを見つけだした彼は、宇宙船の発信する電波をキャッチする。彼や彼とともに逃げ出した人間たち、そして彼と行動をともにするアリを追い、チンパンジーの将軍セードが精鋭部隊を率いて彼らを追う。テイビッドソンは無事帰還することができるのか……。
旧作と比較すると、ストーリーはかなり単純であり、特に風刺的な部分や文明批評の部分がすっぽりと抜け落ちてしまっているという印象を受けた。映画で見ればまた印象が違うのだろうが。それと、序章にあたる部分でほぼネタバレしてるのも衝撃度が低いかな。展開が読めてしまうのだ。
もっとも、訳者あとがきによると本編ではまた違ったエンディングが用意されているかもしれないとのこと。別の著者によるノヴェライゼーションも出版されていることだし、そちらも読んでみた方がいいのかな。まあ、本書を読んだ時点ではレンタルビデオで借りるかテレビ放映を待つかで十分、という印象が残った。
(2001年7月5日読了)