新シリーズの開幕。
湾岸戦争終結直前に登場した人型兵器RF。予算がかかり過ぎるこの兵器の開発のためにRFの格闘戦を行い公営ギャンブルとして経営しながら、『恵理谷闘専』という専門学校で設計から搭乗員までを養成していた。志村瞳子は設計士を目指して『恵理谷』で学ぶ学生だが、彼女が担当しているRFガンヒルダは連戦連敗。そこに現れたのは転入生の高雄沙樹。可愛らしい名前とは裏腹に沙樹は不良っぽい男子で、しかも彼女のルームメイトになってしまう。なにかにつけて喧嘩になる二人だったが、担当教官、白石奈緒の思惑もありガンヒルダには沙樹が搭乗することになった。沙樹はガンヒルダをみごとに操り勝利する。その夜、瞳子は行方不明になり……。
戦争は嫌うが兵器に愛着のある少女、そして自分の存在意義を探して戦う少年、二人を中心にした人間模様を丁寧に描いている。正統派の青春小説といえるだろう。登場人物に対する作者の優しいまなざしが感じられ、好感が持てる。
また、二足歩行兵器の開発のために戦闘をスポーツとして公開しギャンブルの対象にするというアイデアが面白い。こういったタイプの作品は設定がしっかりしていないと登場人物も動かしにくいのだが、その点では申し分ない。しかもその登場人物それぞれに秘密や過去が隠されておりそれが物語にも奥行きを与えている。
なお、私は本書を(私が理想とする)架空戦記のバリエーションの一つとして楽しむことができた。現実の世界に違う要素を組み入れることによって新たな世界が展開する、その面白さがあるのだ。これまではSFミステリ的な作品が多かった作者だけに、本シリーズは新しいパターンへの挑戦ということで大いに注目したい。
(2001年7月3日読了)