読書感想文


教養としての〈まんが・アニメ〉
大塚英志+ササキバラ・ゴウ著
講談社現代新書
2001年5月20日第1刷
定価700円

 元マンガ雑誌の編集者である二人の著者が、専門学校でマンガやジュニア小説について講議した時に生徒たちがあまりに過去の名作について知らないかということに愕然とし、「教養」として知っておいてほしい〈まんが・アニメ〉についてまとめたものである。
 マンガは大塚英志が担当。手塚治虫、梶原一騎、萩尾望都、吾妻ひでお、岡崎京子をとりあげキャラクターの成長というテーマを軸にマンガがどのように変化していったかを概説する。アニメはササキバラ・ゴウが担当。宮崎駿と高畑勲、出崎統、富野由悠季、ガイナックスに加えて石ノ森章太郎をとりあげ、映像の技法からなる表現の移り変わりを軸にアニメの表現してきたものとそれを受け止める相手の変化を説く。
 〈まんが・アニメ〉論としてはツボを押さえた面白いもので、説得力もある。ただ、前書きにあるような「専門学校の生徒」向けのものとしては主観が入り過ぎていて難しいと思うし、〈まんが・アニメ〉のファンにとってはページ数の関係もあって幾分物足りなさを感じさせてまうように思う。マンガやアニメにそれほど思い入れのない一般読者にとってはちょっとマニアックに感じられるのではないか。
 〈まんが・アニメ〉を「教養」としてとらえるということを意識し過ぎたのかな、という気がしなくもない。娯楽として製作されたものはあくまで娯楽として読み解くべきだと私は思っている。娯楽として作られた〈まんが・アニメ〉をあえて「教養」という枠組みの中に押し込めてしまったがゆえにいささかどっちつかずのものにならざるを得なかったのてはないかと思う。
 そういう意味では著者たちにはコンセプトを新たにして再度挑戦してほしいと思った。書こうとしている内容そのものは決して悪くはないのだから。

(2001年7月8日読了)


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