異生物訓練士の卵、ミリ・タドコロはロデオのレディース選手権に代打出場し、うまく暴れピンカリを乗りこなしたところをゼネラル・ブリーディング社の仕入れ担当支配人、ヤッサ・エッサに見い出され、絶望視していた就職を決定する。初仕事はラップ・ミュージシャンでありシチルニア首長国の王族でもある、ペテロ・シュルツの依頼。ボディーガードになるような獰猛な異生物ヤアプを狩り、飼い馴らし、ペテロに渡すこと。溲瓶型宇宙船〈バセットハウンド〉に乗り込んだミリは変人揃いのクルーとともにヤアプの住む星へ。ドタバタしながらもやっとヤアプを捕獲して「ポチ」と名付け訓練を開始したのはよいが、船長自らよるクーデターやらペテロのもくろみを阻止しようとする元プロレスラーユーニスに狙われるやらで絶体絶命のピンチ。ミリたちの運命やいかに……。
作者の久々の長篇。独特のユーモアのセンスが、アイデアやストーリー展開の根幹をなしている。ユーモアのキモは、変な登場人物が奇矯な振る舞いをするというものでは決してないことを作者は示している。一見まともそうに見る人物が真剣に行動しているにもかかわらず思惑とはどんどんずれていく、そのずれぐあいのおかしみがよい。
おそらく本書は主人公の成長物語ということになるのだろう。本巻では周辺の人物の個性に押されるような形でその兆しをちらほらとほのめかすだけにとどめているが、下巻ではその存在感を十分に発揮させてくれることだろう。その成長ぶりを楽しみに待ちたい。
(2001年8月5日読了)