読書感想文


新・魔獣狩り 6 魔道編
夢枕獏著
祥伝社 ノン・ノベル
1999年4月20日第1刷
定価800円

 「新・魔獣狩り5 鬼神編」に続くサイコ・ダイバー・シリーズ、第18巻。
 魔人空海と人格が融合した黒御所は、猿翁を従えて腐鬼の里に向かう。一方、九門鳳介は腐鬼衆の一人、梵とともに暴力団神明会のもとに捕らわれたまま動けない。文成仙吉は恋人涼子を連れて、鬼奈村典子のかくまわれている東北の地へと向かう。その行く手である花巻には不思議な魅力を持った少年金犬四郎が現れるが、彼は古代から伝わる空海の四殺の力に関わるケセン一族の一人だった。空海の復活が、多くの人々を東北へと動かしていく。その先にあるものは何か……。
 主要な登場人物はこの巻でほぼ出揃ったと見ていいだろう。徐福伝説と弘法大師をからめ、さらには日本古代史の領域にまで踏み込みつつ物語は動く。ただ、本巻ではまたその動きはゆるやかで、嵐の前の静けさという印象を与えた。登場人物たちが全て東北に集合した時、はじめて物語が大きく動くのではないだろうか。そのための伏線として本巻があると見た。とにかく九門鳳介が動かぬ以上、物語も動かない。続巻をひたすら待つしかないのである。

(2001年8月6日読了)


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