読書感想文


KLAN I
田中芳樹著
集英社スーパダッシュ文庫
2001年7月30日第1刷
定価476円

 日高虎ノ介は一人暮らしをしている高校生。ある日彼の父親が突然彼の前に姿を現し、腹違いの妹を助けるように言い残していく。そして翌日、父は汚職事件の責任を取るために自殺をした。父に託されたのは汚職事件の真相を記した証拠。虎ノ介は妹の風子を迎えに行くが、風子は彼の目の前で何者かにさらわれ、父の愛人は家もろとも爆破されてしまう。風子を助けようと軽井沢へ向かう虎ノ介を助けるたのはフランス人の少女ルネ。父の会社の幹部によって監禁されていた風子は関西弁でしゃべる旧ソ連の工作員養成所出身の少年アリョーシャ。彼らは全て獣に変身するハムランムルの血をひいていた。ハムランムルの属するクランを支配下に置き世界の支配をも目論む リンフォード伯爵は、虎ノ介たちにも従属することを迫る。しかし、彼らは自分の意志で生きることを選び、伯爵に対抗する道を選ぶのであった。
 オリジナルアニメの原作として書かれた作品で、なるほどそう言われてみれば主要なキャラクターがそれぞれはっきりした性格を持ちさまざまな読み切りストーリーを作りやすい設定になっている。
 むろん作者の好きな社会風刺も汚職事件のもみ消しなどで盛り込まれている。世界各地に伝わる変身譚をクランという設定のもとにうまく統合し、単純化した腕前は作者ならではの職人技といえるだろう。ただ、そうやって単純化されている分だけストーリー全体が薄っぺらい印象を与えてしまっているのが残念。
 今後は複数の作家によってシリーズが書き継がれていくことが予想されるが、この設定をそれぞれの書き手がどのように展開していくかが今後の見どころとなるのではないだろうか。

(2001年8月10日読了)


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