読書感想文


カーマイン・レッド セトの神民〈前編〉
霜島ケイ著
角川ビーンズ文庫
2001年10月1日第1刷
定価419円

 新シリーズの開始。
 辺境の惑星タピスで、情報屋のジャスパーは暗殺者から逃げ回っていた。それは、ゴールに到達すると大金が手にはいるという命を賭けたゲームに参加してるためなのであった。占い師に「女難の相が出ている」「赤い色に気をつけよ」と言われたジャスパーだが、赤い髪に赤い瞳の少年エイジュと出会ったことで状況は一転する。テロリストたちにゲームのゴールである〈アム・ドゥアト〉の名を知られたジャスパーは、その地にエイジュとともに行くように脅される。無口なテロリスト、エイジュと同道して赴いたのは、2世紀前に姿を消した伝説の幽霊船〈ハザンF−5〉であった。ゲームの参加者であるチェンも加わり、幽霊船に乗り込んだジャスパーを待ち受けていたものは……。
 目的が与えられ、その途上に試練が待ち受けるという展開はまさにゲームそのものなのである。しかし、ゲームの影響を受けた多くのヤング・アダルト作品と違うところは、主人公がゲームであることを意識しているところである。与えられる試練は主人公の成長のためにあるものではなくプレイヤーたちをゲーム・オーバーにしてしまうトラップであることを意識し、出し抜いていくあたり、ある種のクールさを感じる。斜に構えながらも内心に純粋なものを隠し持っている主人公もよいが、テロリストとして育てられそれしか生きる道のないエイジュという存在にテーマ性を強く感じる。
 地球と全く同じ条件の移民惑星タピスの存在など、本巻にちりばめられた謎は多い。園なぞの解決篇にあたるであろう次巻に注目したい。

(2001年10月20日読了)


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