軍払い下げの民間宇宙艇フェニックスに仕事を依頼してきたのは太田のおばちゃんという女傑。木星の大赤斑を調査するというのだ。父のマイケルと二人で会社を営業している美鈴だが、おばちゃんは死んだ母親のことをよく知っているらしい。そこに現れたのが宇宙軍の最新鋭艦ネルソン。艦長のハメル大佐はプライドは高いが血筋だけでその地位にある無能な男。フェニックスを海賊船と思いこみ攻撃を仕掛けた上に、その攻撃が失敗したらフェニックスを追って木星の大気圏に突入してきた。かくして宇宙であれば圧倒的な差のある2つの艦船が大気中で戦闘を始めることになった。果たして指揮官が無能だが最新鋭の戦艦と有能な人間が操る小型の宇宙艇、どちらがこの無意味な戦いを生き残ることができるのか。
ポイントは大気圏での宇宙船の戦闘というよりも指揮官の能力の差というところだろう。ただ、作者が無能な指揮官を配置したのは大気圏での宇宙船の戦闘という条件を作るためであろうし、そういった設定にした時点で勝敗は見えている。だから、勝敗よりも大気圏での宇宙船の動きに注目すべきなのかもしれない。ただそれだけだとちょっと弱いかなという気がする。ハメル大佐というキャラクターはけっこういい味出しているのだから、もっともっとめちゃくちゃなことをさせた方が筋を予想しにくくなって面白かったのではないだろうか。
(2001年10月22日読了)