村田真一(ジャイアンツ)、山本功児(オリオンズ他)、王貞治(ジャイアンツ)、江夏豊(タイガース他)、新井宏昌(バファローズ他)、角盈男(ジャイアンツ他)、野村克也(ホークス他)、東尾修(ライオンズ)、真弓明信(タイガース他)、山本和行(タイガース)、駒田徳広(ベイスターズ他)、鈴木孝政(ドラゴンズ)、中村紀洋(バファローズ)といった、選手として芽が出るのに時間がかかった野球人と、須藤豊(ホエールズ他)、牧野茂(ジャイアンツ他)、根本陸夫(ライオンズ他)、上田利治(ブレーブス他)、西本幸雄(ブレーブス他)、伊原春樹(ライオンズ他)、権藤博(ベイスターズ他)といった指導者として脚光を浴びるのが遅かった野球人をとりあげ、そのエピソードをまとめたもの。
いつもの近藤節ではあるが、本書に関してはいささか冴えを欠いているように思う。「遅咲き」の基準があいまいであることがまず大きい。江夏のように若い頃スターとして君臨しながら一時その輝きを失ったが違った形で復活した人物と、村田のように若い頃は注目されなかったがベテランと呼ばれる年齢になって開花した選手とは「遅咲き」の意味は大きく違ってくるだろう。
また、戦国武将や軍人のエピソードをもってきてそれと野球選手の生き方をオーバーラップさせる手法は健在だが、本書ではなぜそんなエピソードを書いたのか理解に苦しむこじつけめいたものが多く、読んでいてひっかかりを感じてしまった。
取り上げる選手がスター選手ばかりなのも気になる。昔の著者なら球史のかたすみでちらりと光を見せた選手を多くとりあげるところだろう。
版元が人生訓を要求しているのでこういうことになったのかもしれないが、往年の著作と比べると見劣りがするのは否めない。名人も年老いたということなのだろうか。
(2001年11月3日読了)