あなたが目を覚ましたとき、あなたは自分の知っているのとは何かずれている世界に迷いこんでいる。だじゃれで構成されたその世界の「反・ブッダ」であるあなたは、赤、黄、青の三色のキャンディを集めて食べなければならない。三色のキャンディを食べたものは、α、β、γの三つの並行世界から一つだけを選んで救うことができる。あなたはβ世界から来たので自分の世界を救いたい。しかし、あなたが現在存在しているγ世界の人々はあなたがβ世界を救うとγ世界が消滅してしまうので、それを阻止しようとしている。あなたは三色のキャンディを手に入れて自分の世界を救うことができるだろうか。
細かなギャグを並べ立てて微妙にずれた世界の面白さを出そうとしているのだろうが、いかんせんギャグがつまらない。時々秀逸なギャグもあるのだが、それが次のギャグにつながってこない。枝雀理論でいうところの「緊張と緩和」の緩和ばかりで緊張がないのだ。緊迫した展開を一気に突き崩すギャグでなければ笑いたくとも笑えない。本書の目的が読者を笑わせることにあるとすれば、それが成功しているとは言い難い。ギャグに免疫のない人はこれでも笑うのだろうけれど、「笑っていいとも」会場の観客みたいな読み手ばかりとは限らないのだ。
読み手を笑わせることが目的でないとすれば、並行世界の概念を変える実験小説なのかもしれない。だとすればもっと大胆な実験をしてもよかったのではないか。
こういったタイプの小説は、徹底的にやらなければ面白くならないと思う。計算している部分が私には透けて見えてしまい、鼻についた。漫才師ちゃらんぽらんの決め台詞を借りるならば「ちゅうううとはんぱやなあ」とツッコミを入れたくなるんである。
(2001年11月9日読了)