読書感想文


クラシック批評こてんぱん
鈴木淳史著
洋泉社新書y
2001年8月20日第1刷
定価720円

 明治時代のクラシック演奏家の批評から、野村あらえびす、小林秀雄、吉田秀和、宇野功芳、黒田恭一、さらに「2ちゃんねる」の匿名掲示板までを俎上に乗せ、批評というものを本質的に考える一冊。
 批評のパターンを分類し、批評がクラシック愛好家に与えてきた影響を考察し、批評の書き方を考え、批評がなぜ書かれるのかを探る。もちろん、著者独特の茶化した書き方をしているので、笑い飛ばしながら読むことも可能だが、じっくりと読めば読むほど「批評」というものについて深く考えずにはいられないという仕掛けがほどこされている。
 私は本書を読みながら自分が関わっている「書評」というものについて関連づけずにはおれない。そういう意味では本書は「クラシック批評」をモチーフにして「批評」すべてに通じる普遍的な課題を提示したといえるだろう。
 クラシック音楽に関心がなくとも、「批評」という行為をおこなっている人すべてに読んでもらいたい本だと思う。
 ところで、本書は表紙から奥付に至るまで著者の名前を「敦史」と誤記している。正しく「淳史」と書かれているのは著者あとがきの最後につけられた名前だけ。これを考えると編集者の失敗であることは明らかである。著者の手になると思われる皮肉たっぷりの「訂正文」が別紙ではさみこまれているが、せめてカバーくらい刷りなおしてかけかえることはすべきだと思う。

(2001年11月24日読了)


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