読書感想文


動物化するポストモダン オタクから見た日本社会
東浩紀著
講談社現代新書
2001年11月20日第1刷
定価660円

 ポストモダン的にオタクの行動を分析し、それを現代社会全体に敷衍させる理論づけをしていこうという試み。
 大きな物語が深層にあり、それを二次的に再生産していった80年代から、大きな物語が失われたかわりにデータベース化された設定を組み合わせて別なものを構築していくようになった90年代という分析をおこない、今後は事象は階層化されたものから「超平面化」したものになっていくという展望を示す。
 たとえばデータベース化されたものから取り出される現象は「キャラ萌え」であり、「ギャルゲー」はそれらを「超平面化」していく行為であるということになる。それらは「オタク」だけに生じた現象ではなく、コギャルたちの出現と表裏一体をなしているのだと著者は説く。
 これらの分析を私が完全に理解したかというといささかこころもとなくはあるのだが、ここ数年「ヤングアダルト」小説を読み続け追いかけてきた私としては、思い当たるところも多々あり、心のどこかにひっかかっていたぼんやりしたものに筋道をつけてくれるよすがとなったように思う。
 とはいえ、この論考からは「オタク」の行動とそれに付随する現象はあきらかになるのだが、消費する主体である「オタク」そのものの姿がまだはっきりとは見えてこないように思う。「オタク」に提供されるものとその消費のされ方はあきらかになっても、それを消費する「オタク」の心理にまでは十分に踏み込めていないという印象を受けた。これは今後の著者のさらなる論考を待ちたい。

(2001年12月3日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る