読書感想文


週刊ポストは「八百長」をこう報じてきた
週刊ポスト編集部編
小学館文庫
2000年5月1日第1刷
定価533円

 「八百長」とは嫌な言葉である。正々堂々と勝負していると信じてきた大相撲の世界にはびこる「八百長」について週刊ポストが長年執拗に追ってきた結果がまとめられたのが本書である。
 私は週刊ポストに「八百長」告発の記事が載るたびにその記事を必ず読んできた。その内容はショッキングではあった。横綱や大関が自分の地位を守るために数十万円以上の金で勝敗をやり取りしていたというのだから。が、長年読み続けていると、その取材相手によって話が食い違う点がでてきて、鵜呑みにするのも危険であると感じてもいる。
 こうやってまとめられたものは、そういった矛盾が生じないものをうまく集めてある。だから、本書だけを読むと力士たちがものすごく汚い存在に見えてしまう。
 ところが、週刊ポストは「八百長」レポートでは応援すらしていた「ガチンコ」力士である若貴兄弟を追い落とすようなスキャンダル記事も掲載し、本書刊行後に相撲人気が凋落すると、それまで執拗にやってきた「八百長」レポートを一切掲載しないようになってしまった。
 そうなると週刊ポストが果たした役割はなんだったのか。それは本書の文中で再々書かれている「角界浄化」ではなく、相撲人気につけこんでスキャンダラスな記事を垂れ流し、相撲人気を落とすことだったのではあるまいか。部数に関係ないとなるとぼろくずのように捨ててしまうという現状を見ると、「角界浄化」のかけ声が虚しく響く。
 たとえ本書に書かれていることが真実であったとしても、そんなことはもうどうでもよい。力士は異界の人なのである。そしてわれわれ相撲ファンにチカラビトの幻想を見せてくれればそれでよいのである。相撲は技芸の一種であり、近代スポーツではない。裏で金が動いていようとどうであろうと、面白い相撲を見せてくれればよいのである。たとえガチンコ相撲でも立ち合いの変化で一瞬のうちに勝負が決まるような相撲はみたくないし、たとえ八百長相撲でも手に汗握る攻防がそこに含まれていればそれでよいのである。
 そういった視点を欠いた本書は、たとえ真実の告白であっても本当に相撲界のことを思って出版されたわけではなく、力士と週刊誌の汚い足の引っ張りあいを見せるだけのものでしかないのである。

(2001年12月10日読了)


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