読書感想文


復刊 あたらしい憲法のはなし
小さな学問の書 2
童話屋編集部編
童話屋
2001年2月26日第1刷
定価286円

 1947年に文部省が発行した中学校1年用の教科書の復刊。日本国憲法が公布された直後に、その内容や精神をわかりやすく書きあらわしている。
 その執筆姿勢の真摯なところに、私はうたれた。終戦直後の政府と国民の気持ちがこれほどはっきりと書かれている書物もないだろうと思うくらいだ。そのわかりやすさも特筆に値する。「民主主義」「基本的人権」「国際平和主義」「主権在民」「地方自治」についてその根本的な考え方を完結に記述している。格調高い名文というわけではないが、達意の文章である。
 中学校の公民、あるいは歴史の教科書に本書を付録としてつける会社はないものだろうか。戦後日本の貴重な証言であり、一部の偏向した書き手による恣意的な記述もなく、憲法、いや、日本という国の社会の仕組みを知るのにこれほど最適なものはないであろう。
 そして、現在の日本が本書が書かれた時の精神をゆがめてしまっているという現実を目の前に突き付けてくれるという意味においても、だ。
 こういった貴重な書物の復刊は大いに意義のあることだし、今後も続けていってほしいものである。

(2001年12月13日読了)


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