よみうりテレビ「週刊トラトラタイガース」のキャスターを14年間つとめた著者が、その間に触れた男性ばかりの特殊な世界について綴り、目標が見えないままに戦い続けなければならない男たちの不屈の姿を活写したエッセイ。
特に野球に関する知識はなく、野球選手との接触もなかった著者は、番組で共演している川藤幸三さんを通じて選手との接し方を模索する。彼らの強い面、そして弱い面を知るほどに人間としての野球選手に興味をもち、タイガースというチームを好きになっていく。その過程では女性であるという理由で拒絶されることもあれば、逆に気を遣って接したことが裏目に出ることもある。特にフェミニズムについて学んでからは、男性ばかりの世界に対して独自の視点を持つようになり、野球選手に対する見方がより深くなっていく。
版元の関係からか、最終章には人生訓みたいなものがついていて、それが若干興をそぐ。しかし、野球とは無関係であった著者が予備知識のないままに選手の素顔に迫っていく過程は、本職のスポーツ紙記者の書いたものよりも野球選手の本質というものをとらえており、興味深く読むことができた。
体育会系というフェミニズムとは対極にある世界に対して偏見をもつことなく、感じたままを素直に記しているところなど、好感がもてる。そして、負けても負けても戦いつづけるタイガースナインがさらに愛おしくなる。そし、野球に対する見方も少しずつ変わっていく。
タイガースファンだけではなく、特にジャイアンツファンに読んでもらいたい一冊。また、野球に興味がない人だからこそ著者の素直な心情を理解できるという意味でも、読んでみてほしい。著者と野球選手、特に川藤さんとの交流などから、人のもつ悲しさや切なさを感じとってもらえる本ではないかと思う。
(2002年2月1日読了)