読書感想文


木の国の媛
太陽の娘1
ひかわ玲子著
徳間デュアル文庫
2002年1月31日第1刷
定価619円

 途絶してたシリーズの復刊。
 木の国にすむ村酋の娘、ヨキナは根の国からやってきたという青年、速瀬男と出会い、異国からの侵略者がくると警告される。はたして侵略者は現れ、なんとか逃げ出したヨキナは根の国に向かう。途中で神から七重の衣と剣を渡された彼女は、剣を鍛えるために火の島へ旅立つ。神に守られたヨキナに課せられた運命は、侵略者から木の国を守ること。今、運命のコマがまわりはじめた。
 古代日本を舞台にしたファンタジー。真名を呼び合うことにより、運命を分かち合うというしきたりや騎馬民族侵略説などをとりいれ、まとまりのよい形の物語になっている。反面、古代史の持つ野性味には欠けるのが残念だ。
 また、主人公の少女がなぜ神から選ばれたのかの根拠など、まだ語られていない部分は多い。今後の展開でそれらは明らかにされるのだろうが、選ばれたものが運命に導かれるという展開はいかにもファンタジーらしい設定である。ファンタジーの定型にとらわれることなく、大きな構えのシリーズになることを期待したい。

(2002年3月8日読了)


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