「ブギーポップ」シリーズの外伝的な新シリーズの開幕。
〈統和機構〉の人造人間、ピート・ビートは、同じ〈統和機構〉で最強の能力を持つフォルテッシモの依頼を受けて〈カーメン〉という存在について調べはじめる。彼の能力は人のもつリズムを感知することだ。〈カーメン〉はどうやら〈統和機構〉に敵対する〈ダイアモンズ〉に関係していると目をつけたピート・ビートは、鍵を握る篠北という男と会う。篠北との戦いで相手を殺したピート・ビートだが、その葬儀をのぞいた時に彼の能力を持ってしてもそのリズムを受信できない不思議な少女、浅倉朝子の存在を知る。彼女はピート・ビートが在籍している私立高校の同級生だったのだ。彼女の秘密を探ろうと通学をはじめたピート・ビートだったが、彼女もまた彼に興味を抱いていた。しかし、〈カーメン〉に深入りしようとするピート・ビートをねらい、〈ダイアモンズ〉の能力者、ラウンダバウトが現れ、彼を窮地に追いやっていく。戦いの果てにピート・ビートと朝子の運命は大きく変わっていく……。
本書では「ブギーポップ」ではいくぶん書き割りのような感じであらわれる〈統和機構〉の視点で世界を描いている。ピート・ビートやラウンダバウトの能力は、いかにも作者らしくストレートな超能力ではない。そして、「世界の敵」であるはずの〈統和機構〉にも複雑なドラマが存在するというところで、「ブギーポップ」の世界観に奥行きを持たせようとしているのだという意志が感じられる。
アクションシーンなど、これまでの作者とはまた違った一面を見せてくれる。結果をほのめかしながら物語を進めていくという展開にもいっそう磨きがかかったという感じだ。そういう意味では、本書は作者が作家として自分のスタイルをほぼ確立したということを読み手に印象づける一冊だといえるだろう。
それでもまだ〈統和機構〉の存在感にはリアリティが感じられなかったりするのは、作者があえてそれを避けているからなのか、それとも作者自身が〈統和機構〉に対して確たるものをつかみ切っていないということなのか。今後、主人公たちと〈統和機構〉の関係がさらにくわしく描かれる中でそれは明らかになるのかもしれない。続編以降の展開に注目しておきたい。
(2002年3月17日読了)