本書は、カントやヘーゲルやニーチェの思想をわかりやすく解説したもの、ではない。著者がふだん考えている社会的な事象を、これらの哲学者の思想を使って読み解くという試みである。
そこには、不倫、公害、民主主義、人権、そして国家論までさまざまなものが題材とされている。カントの「理性」はわれわれの生きる社会の「道徳」を通じてより鮮明に描き出されていく。ヘーゲルの説く「市民社会」を現在の社会に照らし合わせていくことにより「国家」の姿が見えてくる。そしてニーチェの「無意識」は民主主義の持つもろさを明らかにし、それらを踏まえた著者は社会の倫理的なあり方について考察を深めていく。
本書は「倫理学」の書である。ここでは哲学と道徳をからめることにより、社会というもののありようを見直すという命題が貫かれている。著者は偉大な哲学者の思想を素材にして現代社会の抱える問題をいかに解決すべきかを模索する。
それこそが、題名通り「自分の頭で考える倫理」を実践したものなのである。そしてわれわれは本書を土台にしてさらに社会や道徳や哲学的命題をより深く考えなけれはならないのである。
本書の平易さは、まさに「自分の頭」を使って「倫理」を考えていく素材としてうってつけなのである。
(2002年4月24日読了)