読書感想文


捕手論
織田淳太郎著
光文社新書
2002年3月20日第1刷
定価680円

 これまで、捕手出身の野球解説者による捕手論やスポーツ専門誌の特集記事などで捕手について語られることは多かったが、本書はノンフィクション・ライターによる捕手についての考察というこれまでにない切り口の一冊である。
 古田、谷繁、城島といった現役の捕手について投手や捕手の立場から野球解説者に対してインタビューを試みるとともに、水沼、森というかつての名捕手の方法論と実際のケースを論じる。また、審判や投手との関係、アメリカ大リーグの捕手と日本の捕手の性質の違いなど多面的に捕手像をとらえてから、ブロッキングやキャッチングなどの技術論、そして締めくくりとして野球チームにおける捕手の位置付けを考察する。
 本書で特に面白いのは、捕手の立場にたってあの名作ノンフィクション「江夏の21球」を解読し直す「水沼四郎の21球」である。ここに見られる天才投手江夏と職人捕手水沼の、同じ場面に対する見方の違いは、投手と捕手という立場の違いを越え、華やかなスターと地味な脇役の生き方の違いさえ示唆している。そして、野球というスポーツの見方をより奥深くするものになっているのだ。
 投手という人間が独特の感性を持っているように、捕手にもかなり特別な感覚が必要なようである。それを多面的に描き出した本書は野球ファンにとって観戦の幅を広げるユニークな解説書といえるだろう。

(2002年4月26日読了)


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