星雲賞受賞の同題短編とその続編を再構成して長篇化したもの。
太陽の周辺に突然リングが出現し、そのために地球の日照は大きく減り気候は激変した。リングを作り出したのは水星に作られていたリングの発生装置。高い知性を持つものがまず最初にそれらを送りこみ、そして本体があとから到着しエネルギーを奪い取ろうとしているようだ。最初に発見した時に高校生の少女であった白石亜紀は、生涯をこのリングの研究に捧げることになる。彼女は宇宙船でリングに接近し、同僚でひそかに恋をしていたマークの死を犠牲になんとか破壊することに成功し、一躍英雄となる。その後、だんだん太陽系に近づいてくる知性体を迎え撃つ準備が進められる。亜紀はなんとか友好的にコンタクトをとろうとするが、相手から応答はない。かくして、太陽系に最接近してきたところでコンタクトを試み、失敗すれば攻撃するという手はずがととのえられる。亜紀がコンタクトした知性体の意外な姿とは……。そして、このファースト・コンタクトの結果は……。
本書は、ファーストコンタクトをテーマとしたハードSFである。特筆すべきは、異星人がいきなり来るのではなく、周到に準備をしてからやってくることと、その間にたつ時間を提示していることである。つまり、宇宙開発の速度、あるいは宇宙空間を旅するということにかかる時間などをちゃんと示して、その大きさを表しているのである。これは作者が設定を練りに練った結果であることはいうまでもないだろう。その成果は、十代の少女が五十代の壮年になってしまうという時間経過を見ただけで明らかである。
さらに、ここでは知性というものに対する貴重な考察がなされている。人間とは全く違って認識を持つ知性を想像するということの難しさ。作者はそれをみごとに創出しているのだ。
そして、ひとつのことに賭けた人間が切り捨てていったものの多さというものをも実感させてくれる。幸福の価値基準が人によって違うことはいうまでもないが、主人公が賭けた人生の重みを考えると、人間の価値観というものについても考えさせられるのだ。
本書はもちろん作者の代表作として、そしてハードSFの傑作として今後も語り継がれることになるだろう。それだけのものを、作者は本書に賭けているのではないだろうか。
(2002年5月14日読了)