阪神タイガース前監督である著者が、その生い立ち、そして夫人である野村沙知代さんとの出会いから脱税容疑による逮捕、タイガース監督辞任以後の思い出や心境を綴ったもの。
自ら劣等感の塊であることを告白し、野球一筋に生きることでそれを克服しようとした様子や、いかに気の強い夫人であろうとその夫であれるのは自分だけであるという宣言など、いささか自己弁護じみている(特に南海ホークス監督解任のいきさつあたりは)内容である。
納得できたのは、タイガース監督を引き受け「野村フィーバー」が起こったあたりからいわゆる「サッチー・バッシング」がはじまり、そのために精神的に不安定になったと告白しているあたり。著者ならずとも、あのタイミングで突然「サッチー・バッシング」が苛烈になっていったのは不自然だと感じていた。著者がタイガース監督として成功することを妨害しようとするなんらかの意図があったように私は感じていたのだが、当事者である著者にとっては、それは野球に集中できず精神的に不安定になる要素のひとつだったといえるだろう。
著者は「野村の考え」という野球論をぜひ出版したいと思い、できれば高校野球の監督をしたいと願っている。本書は野球の奧深さを感じさせる記述はその片鱗が少し見えているだけであるので、ぜひ「野村の考え」は自費出版ではなくちゃんとした形で刊行してほしいものである。
救いは、タイガースに対する恨みつらみを一切書いていないこと。これだけ愚痴っぽい人が、それをしなかったということが、嬉しい。
まあこれは出版された時点での話題性が売りになっているものなので、とりあえず出た時に読んでおかんとと思ったわけだが、確かに今読まないとあまり意味がないという感じがした。
(2002年5月16日読了)