浪花節最後の大スター、二代目廣澤虎造の生涯を小説化したもの。浪花節に魅了された少年時代、大阪で就職しながら結局プロの門を叩き、そして東京に戻り虎造節を作り上げていく修業時代、売れっ子となり一世を風靡しながらも戦雲に巻きこまれていく壮年記、戦後浪曲界の大スターとして君臨しながらも、病に倒れ無念の引退を遂げた晩年……。その時々の虎造の心境を、浪花節の変遷をたどりながら活写していく。
その語り口にぐんぐんと吸いこまれていく。艶聞も含め、虎造という人物の気っ風のよさと責任感の強さが生き生きと描かれている。藝人に対する作者の愛情が伝わってくる。そして、浪花節を聞きたくなってくる。
藝人の評伝の書き手は何人もいるが、小説としてここまで生身の姿を書けるというところがこの作者のすばらしいところだと思う。そして、私のように浪花節に関心のなかった者でさえ(といっても、虎造節はCDで楽しく聞いたことはあります)その世界に引きこんでいくその筆致に感心してしまうのだ。
これもまた、作家の「藝」というものではあるまいか。
(2002年6月2日読了)