阪神タイガースへのファン心理と仏法の神髄を無理矢理こじつけた変な本であります。
勝てば狂喜し負ければそれをありのまま受け止める、勝つことのみにガツガツせず、負けても負けても負けても負けても応援しつづける心、これこそが仏の教えにつながるのだそうでございます。それは違うのではないかと思うのでありますが、なにしろ仏教の教えを長年にわたってわかりやすく説き続けてきた著者のことだから、妙な説得力があるのでございます。仏さまは「希望をもつな」と教えておられるらしい。それは、希望をもつと現状がみじめなものに思えてしまうからで、それよりも今日一日を大切に生きるべきだというのであります。勝ったからといって勝ちつづけることを望まず、負けたからといってそれを翌日に持ち越さない、それが仏の道にかなった応援の仕方で、タイガースファンは自然にそれを体得するのだそうでございます。
そうか、私は知らず知らずのうちに仏のこころを身につけていたのだなと安心させてくれる本であります。そんなわけないと思うのだけれど、そこに至る論理の飛躍のぶっ飛びぶりがむやみに楽しい。そして、著者に対して思わず同病の絆を感じてしまうのであります。
ほんまにタイガースファンというのはこれやから、ねえ。高名な仏教研究家の心まで惑わせてしまうタイガースという存在のすごさを思い知らされるわけでありますね。
(2002年7月5日読了)