読書感想文


笑いをつくる 上方芸能笑いの放送史
澤田隆治著
NHKライブラリー
2002年6月30日第1刷
定価870円

 ラジオ開局、初代桂春團治の出演に始まり、エンタツ・アチャコからダイマル・ラケットへとつながるラジオ番組隆盛期を経て、「スチャラカ社員」「てなもんや三度笠」などのテレビコメディの黄金時代、MANZAIブーム、そして現在のバラエティに至る上方演芸の放送史をコンパクトにまとめている。テレビプロデューサーとして、演芸放送の生き証人となりつつある著者が、NHKのテレビ講座「人間大学」のために書いたテキストを再編集したものである。著者が研究、調査した成果と、自分自身が経験してきたことを、資料を交えながらわかりやすくまとめている。
 本書のもととなった「人間大学」は、放送当時(1994年)私もずっと見ていた。それだけではなく、はさみこまれていた申し込み用紙を送って、著者自らが感想を書いて返送してくる通信講座も受講したものだ。その時の著者のていねいな感想を読み感激していたことが思い出される。あれから8年もたったのかと、時の流れの早さを感じてしまう。
 むろん、もととなったテキストは、テレビの番組とセットとなったものであるし、やはり放送で流された貴重な映像があるのとないのとではかなり違う。それでも、本書によって、上方演芸が放送局の発展と常に表裏一体となっていたことははっきりと示されているし、それに関わってきた著者の自負というものも伝わってくる。
 本書は、演芸放送史のガイドラインである。初心者の入門書として最適なものである。そして、ここからより深い演芸史をさぐる手がかりとなるものでもある。私は、このあと「日本芸能再発見の会」に入会し、さらに興味を深めていくことになった。そういう意味でも、懐かしくもあり、また多くの人に薦めたい一冊でもある。できれば、「人間大学」もDVDなどで頒布してほしいところではある。

(2002年7月19日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る