長らく政権党として君臨する自由民主党。党内の主導権争いがそのまま首相への道に結びつくという状況で、数多くの者たちがナンバー2のまま最高峰に立つことなく終わってしまった。政治家としては優柔不断と思われた前尾繁三郎、藤山愛一郎、河野洋平。計算を上回る自己の感情に足下を救われてしまった橋本登美三郎、椎名悦三郎、二階堂進、野中広務。策を弄し過ぎて策に溺れてしまった松野頼三、保利茂、石田博英、川島正次郎。実力はあっても人の上に立つにはやや品格に欠けた大野伴睦、広川弘禅、金丸信、中川一郎。実力を過信して突っ走り過ぎた小沢一郎、三塚博、武村正義。そのライバルが強すぎたために自らナンバー2の道を選びとった三木武吉、桜内義雄、田中六助、綿貫民輔。病魔に襲われあと一歩で倒れた緒方武虎、河野一郎、安倍晋太郎、渡辺美智雄。ここという時に仕掛けられずタイミングを逸した後藤田正晴、河本敏夫、梶山静六、加藤紘一。運命の非情さを感じさせる面々ばかりである。
著者は、必ずしもトップに立つことをよしとしているわけではない。自分というものをしっかりと見つめてその道を道なりに進んだものに対する評価は高く、その結果がナンバー2であったとしても、それは称讃の対象となる。逆に、分不相応に勝負を仕掛けたものや、勝負を賭けるべきなのにそれができなかった者に対してはかなり突き放したタッチでその人物像を描き出している。
なぜ首相になれたはずの者がつまずいてしまったのか。本書での分析はそう厳密なものではなく、対象となる人物が違えば物差しが変わってしまうような点も多々ある。そういう点では「研究」という書名はちょっとオーバーかも。戦後政治家群像として、本流から外れた人物にスポットを当てるというおもしろさを楽しみたい。エピソードのまとめ方などはかなりうまく、人物の人間的な部分が魅力的に描かれている。
年代別の人物列伝ではないので、戦後政治史に通じてない人にはわかりにくい点もあるかもしれないが、そのあたりは編集部が巻末に年表を入れてわかりやすくしている。そういった配慮があるのが本書の狙いを象徴しているといえるだろう。
(2002年7月28日読了)