高校生の下石貴志と包国サトル、そしてクラスメイトの草光陽子、飯田篤志、梅暮里志保の5人が河原で話をしていると、突如虹色の壁が空から落ちてきた。子犬が円柱状に彼らをとりまくその壁に触れたとき、その壁からその子犬のとそっくり同じ子犬が壁から生まれでた。その壁には、触れた生き物のコピーを作る謎の力が備わっていたのだ。そして、サトルのコピーが2人もできてしまう。彼らは川を渡って対岸にある担任の古茂田先生の家に行き今後の対策をたてることにしたが、泳げないサトルのオリジナルは川に流されて死んでしまう。さらに、先生の隣家の女主人の死体が発見され、彼らは「ストロー」と呼ばれるその壁の中で起きた密室殺人事件にも巻き込まれることになってしまった。コピーとして生じてしまった者の葛藤、そして殺人犯の意外な素顔。極限状態で彼らのとった行動は……。
本書はのテーマはシミュラクラの存在意義である。本書では「コピー」と称されているが、これは明らかにP・K・ディックの系譜を継ぐものなのである。シミュラクラとオリジナルの関係が、密室という条件の中でより強くえぐり出されている。
作者は高校生を主人公にすることにより、心の中の葛藤をごまかすことなくストレートに表現させることに成功している。もちろんトリックや展開はミステリのものなのだが、SFのアイデアを用いた設定で本格ミステリを書くというスタイルで、テーマ性をより深めていってるのだ。
むろんこれは作者にSFのセンスが十分にないと書けないものであることはいうまでもない。それどころか、テーマの根幹はSFが問い続けてきたものなのだ。それをこういった質の高いエンターテインメントとして結実させていることに大きな意味があるといえるだろう。
(2002年8月30日読了)