1940年、ドイツと共同作戦を組んだ日本海軍は、イギリス本土を攻撃、航空機の活躍によって勝利した。戦艦の出番はいよいよ少なくなり、老朽艦「山城」は修理をするために帰国することになっていた。この戦いの中で、日本軍はドイツ製のロケットミサイルの残骸を拾得する。持ちかえられた残骸は急造された海軍航空技術廠噴進部飛翔体班のメンバー、桜井、安藤、伊勢崎たちによって分析され、日本海軍によるロケット砲の開発が始まることになる。しか、飛翔体班の面々は、ロケット砲開発の技術を使用して、別の夢をかなえようと考えていた。その夢とは……。
架空戦記という枠組みで、新兵器開発に関わる技術者たちの奮闘と苦悩を描き出した物語。様々な工夫と失敗の末にロケット砲が成功する様子は「プロジェクトX」さながらの描写で読ませる。
ロケット砲開発という事態になるように、作者はアメリカが満州国を承認したという歴史改変を行っている。ただ、本書を読んだ限りでは、その改変がもたらした影響がまだはっきりとはでていない。シリーズ化されるのかもしれないが、それならばなおのこと伏線を張るような形でこの設定を生かしてほしかったところである。
また、同様の意味で気になったのは、ロケット砲開発とストーリー上ほとんど関係のない戦車部隊のエピソードがところどころに挿入されていたことで、これもシリーズ化されれば関係性が明らかにされていくのだろうが、本書だけではあまり意味がない場面となってしまっている。続巻の刊行が明らかになっていない以上、その本だけで読めるものになっていなければならないと私は思う。そうでなければ、続巻があると明記すべきだろう。
技術者たちのエピソードにしぼりこんでいれば、架空戦記版「プロジェクトX」という感じの楽しさを満喫できただろう。新人作家にとって、シリーズ化の可能性を有しながらもまずは単発で刊行しなければならないという条件は厳しいものだろう。そういった部分は割り引いて考えるべきなのかもしれないが……。
(2002年9月1日読了)