一人暮らしのフリーライター寺内さやかは、大きな仕事がふいになったのと恋人と別れたのをきっかけに分譲マンションを購入する。入居してから、彼女はマンションの住人の人間関係のおかしさに気づく。やがて独居老人の野末が飼っていたミニダックスフントが惨殺され、その犬をふだんからいじめていた少女、亜由がベランダから転落死をし……と悲劇が続発する。さやかは引きこもりの高校生、千葉かの持ってきたパソコンに写し出された画面を見て驚愕する。そこにはそのマンションを庭に、住人を花に見立て、そのプライバシーを面白おかしく書いたホームページの日記が表示されていたのだ。しかも、その内容は本人以外には知り得ないものであった。誰かが住人を監視しあざ笑い不特定多数の人間に公開している……。次々と起こる異常事態とそれをからかうホームページ。マンションの住人たちに何が起こっているのか……。
マンションという閉ざされた空間の希薄な人間関係が、それをのぞきこむ謎のウェブマスターという存在をからめることにより、さらに浮き彫りにされる。そこにあるのは人間の感情の醜悪さである。誰もが隠し持っているその醜悪さを眼前に突きつけられながらも、そこで起こる事件のスピード感あふれる展開に、一気に読ませられた。
住人のプライバシーをのぞいているのが誰かというミステリの趣向がうまくきいている。しかし、本書はミステリではない。サイコ・ホラーの一面も持っているが、超自然的な要素も加えて、ホラーらしい展開にもなっていく。そのまぜぐあいがよい。
もっとも、SFファンである私には、超自然的な要素がでてくるといささか割り切れない思いがすることも事実ではあるのだが。しかし、純然たるホラー小説のファンであれば、それもOKなのかもしれない。そこらあたりは読み手の感覚によって評価が変わるところかもしれない。
読み終えて、ふと自分が住むマンションは大丈夫であろうかと思わずにはいられない。それだけのリアリティをもって読み手をひきつける作品なのである。
(2002年9月5日読了)