読書感想文


日本人の苗字 三◯万姓の調査から見えたこと
丹羽基二著
光文社新書
2002年8月20日第1刷
定価700円

 著者は柳田国男、折口信夫に師事し、その生涯を苗字研究にあててきた民俗学者。
 本書は、そんな著者が、その成果の一端を、一般読者向けにわかりやすく示したものである。古代の氏姓制度に由来するものから、武家が地名に基づいてつけた氏族から派生したもの、明治維新のあとに新たにつけられたものなど、様々な苗字の由来を分類している。
 苗字もまた、言葉であり、そこにはいわば魂が宿っていることが本書から伝わってくる。その由来を探ることは、自分の家や血筋を確認するというよりも、日本語のもつ可能性の大きさというものを感じさせる。
 そういう意味でも、本書は民俗学上の成果であり、この国の風土と文化を提示したものだといえる。
 ちなみに私の姓「喜多」のルーツは石川県だそうだが、本書には出てこなかった。ちょっぴり残念である。

(2002年9月12日読了)


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