著者は柳田国男、折口信夫に師事し、その生涯を苗字研究にあててきた民俗学者。
本書は、そんな著者が、その成果の一端を、一般読者向けにわかりやすく示したものである。古代の氏姓制度に由来するものから、武家が地名に基づいてつけた氏族から派生したもの、明治維新のあとに新たにつけられたものなど、様々な苗字の由来を分類している。
苗字もまた、言葉であり、そこにはいわば魂が宿っていることが本書から伝わってくる。その由来を探ることは、自分の家や血筋を確認するというよりも、日本語のもつ可能性の大きさというものを感じさせる。
そういう意味でも、本書は民俗学上の成果であり、この国の風土と文化を提示したものだといえる。
ちなみに私の姓「喜多」のルーツは石川県だそうだが、本書には出てこなかった。ちょっぴり残念である。
(2002年9月12日読了)