コンビニエンスストアでだれもが手軽に肉体改造ができる時代、そしてまたコンビニエンスストアには交番のかわりに巡査補として雇われた警官たちが常駐していた。その一人である滝田はコンビニを襲撃したストリート・チルドレンを捕まえる。彼らは家を捨てて群れをなし、公園の中に住んでいる。滝田がつかまえた少年はコンビニでゲームの人気キャラクターに顔をかえた健一という少年だった。健一は顔をかえてから家に戻ると、自分そっくりの少年が自分になりすまして家に入りこんでいたという。不審に思った滝田は少年の周辺を調査し始めるが、上司から捜査妨害を受ける。ストリート・チルドレンに増える感情をもたない子どもたちの存在など謎は深まるばかり。そして、健一が何者かにさらわれるにいたって、滝田は独自に動き始める。李と名乗るジャーナリストの情報提供により、健一は臓器移植開発の大手企業にとらわれたことがわかる。滝田は健一を奪い返し、ことの真相を確かめるために李とともに企業の本部に入っていく。
コンビニエンスストアの普及により、我々の生活は大きく変わった。本書は、さらにコンビニエンスストアが肉体改造や警察事業というアンタッチャブルな領域のサービスをはじめたら、というとっかかりからはじまる。この設定がうまい。さらに、変化する子どもたちの意識や家族関係、さらには遺伝子操作に関わるモラルなど、複数のテーマを扱い、それをサスペンス仕立てにしてみごとにひとつのストーリーに組み上げていっている。設定自体は過去に書かれたSFによく見られるものなのだが、それらの組み合わせ方により新しいものを生み出したという感じである。
本格SFの書き手がハードアクションに挑んだというだけでも驚きだが、ノンストップで展開されるストーリー運びにも驚いた。主人公の秘密はまだ隠されており、シリーズ化も可能なようにしてある。
作者の新しい可能性を開く記念碑的な一冊となるかもしれない。SFファンならずとも楽しめること受け合いである。
(2002年9月14日読了)