読書感想文


海洋堂の発想
宮脇修一著
光文社新書
2002年9月20日第1刷
定価720円

 食玩という形でおまけを主役に変えた海洋堂。ガレージキットでは知名度の高かったこの会社の成功の原因を、専務自らが語る。
 海洋堂は模型店から出発した。ただ、他の模型店と違ったのは、仕入れた模型をただ売るのではなく、模型を作るキットを開発したり、完成品を飾るアート館を作ったりと、購買層の要求に答える店作りをした店にある。しかも、それはマーケットリサーチというような方法で作られたものではなく、売り手が買い手とともに模型というものを楽しむところから発案されたものだった。
 海洋堂のスタッフは、マニア集団である。フィギィアに生涯を捧げたような人々によって製品は生み出され、いたずらにキャラクターに寄り掛かるのではなく、自分たちが納得できるものしか商品化したくない。
 時代がマニアに引っぱられるという、そういう時がきたことを海洋堂の成功は知らせてくれる。むろん、企業として成功した裏には一般の企業と変わることのない企業努力はある。が、その企業努力のモチベーションとなっているものが違うのだ。
 本書を読んで海洋堂から成功の秘訣を学ぼうとするビジネスマンもいるかもしれない。しかし、ごく普通のサラリーマンでは真似のできない世界がここにはある。商品を自分のために作っているようなオタク気質をもった人材がここまで揃う企業があるだろうか。
 本書は海洋堂という特別な企業の一風変わった成功物語なのである。

(2002年9月21日読了)


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