電機メーカーに勤務する中山祥一は、結婚7年目でこれまで浮気はしたことがなかったが、林田理恵という魅力的な女性と出会い、彼女に対して恋といえる感情を抱く。初めて肉体関係を結び、彼は理恵のことを「おれの女」だと強く意識するようになる。おりしも、妻の美奈子がセールストークの男にひかれていると告白したため、夫婦関係は一気に冷え込む。「おれの女」であるはずの理恵とは連絡がとれず、彼は部下である小野真美に誘われるままに関係を持つが……。
セックスシーンを中心とした、いうところのポルノ小説ではあるのだが、恋愛関係にある男女の、相手を独占したいという所有欲をテーマに、主人公の心の動きをうまく描いているので、「恋愛小説」と銘打っているのも嘘ではなかろう。実際、部下との浮気に際しては所有欲がわいてこず、形ばかりのセックスをするというような描写もあり、セックスできればそれでよいというような展開にはなっていない。そのあたり、なかなか興味深く読めた。
なぜ理恵が中山と関係を持つ気になったかという理由がラストで明かされるのだが、作者はたぶんどんでん返し的な効果も狙っているのだろう。しかし、中山が彼女と知り合ったきっかけなどが全く描かれていないため、唐突な印象は免れえない。
全体に、小説としての面白さを狙いながら書き込みが不足していてうすっぺらい印象が残った。作者が本格的な大人の恋愛小説として本書を書いたのなら、もう少し男女関係の深さを感じさせてほしいところではある。
(2002年10月15日読了)