今年で創設88年目という歴史を持つ宝塚歌劇団。その歴史とそして魅力を、長年宝塚専属の演出家として活躍し『ベルサイユのばら』の初演や再演などを手掛けてきて、現在は歌劇団の理事長となっている著者が、わかりやすくコンパクトにまとめたものである。
芸能界における宝塚歌劇の特殊性はどこから来るのか。それは音楽学校という組織を基盤に作られているからだと著者は書く。なるほどと思う。学校という場所は、それぞれのカラーを持ち、かつ閉じられた独自の空間を形成している。いわゆる「校風」というものである。宝塚歌劇団の団員は「生徒」と呼ばれる。音楽学校を卒業しても「生徒」なのである。退団はいわば卒業ということになると、著者は書く。
本書では、宝塚歌劇団の創設者、小林一三への賛辞が至る所で述べられる。小林一三が歌劇団に託した思いというものが、脈々と伝え続けられているということに、驚嘆の念を禁じ得ない。伝統というのは、つまりそういうことなのである。
タカラヅカ一筋に歩んできた著者ならではというべきエピソードも数多く書かれており、芸能史としても貴重な資料になる。タカラヅカを熟知した著者が書いた、格好の入門書といえるだろう。
(2002年10月25日読了)