著者はプロ野球ヤクルトスワローズの敏腕スカウト。しかも、花形選手ばかり扱ってきたわけではなく、原石のような荒削りだが将来性のある選手を発掘することで定評がある。尾花、高津、宮本、土橋、飯田、古田、岩村……。いかにも玄人好みの選手ばかり。ところが、本人は実は華やかな球歴の持ち主であったのだ。
浪商から立教大、そして中日ドラゴンズ。強肩強打の捕手として期待された時期もあった。しかし、プロ入り後は挫折を繰り返し、一軍に定着できぬまま国鉄スワローズへ移籍、そこでいったん球界を去る。産経新聞から夕刊フジのスポーツ記者という仕事をするなかで培った観察眼に着目したヤクルトスワローズが、著者をスカウトしたのである。
著者の着眼点ははっきりしている。プロ向きの性格かどうか、そして欠点を上回る長所があるか。小柄で体力的に見劣りしていても、それを上回る長所があれば躊躇せずスカウトする。またそんな著者の姿勢をよく理解してくれる球団がある。スワローズは、派手さはないがバランスのとれたよいチームである。そこには著者のようなスカウトの力が大きくはたらいているのだ。
本書は、そんなベテランスカウトの回想と、そしてスカウトという仕事の妙味がよく書かれている。できれば選手争奪戦の裏話なども知りたかったが、これは暴露本ではないのでそのような面についてはほとんど触れてはいない。
それでいいのである。著者がスカウティングをどうとらえてるかが、そのような執筆姿勢からもうかがえるのだから。
(2002年10月30日読了)