ワンマン社長が自分の愛人二人とうだつのあがらない男性社員二人を自宅に招いて行った新年会。ところが社長は絞殺死体となって発見され、通報しようとしても電話はつながらず屋敷から出ようとしてもそのまま家に戻ってきてしま、出られない。酒屋の店員がやって来たことがきっかけで元に戻ったが、あまりの異常事態に通常の捜査では解決できそうもない。ミステリ作家保科匡緒のもとにやってきたのは〈超能力問題秘密対策委員会〉略して〈チョーモンイン〉の出張相談員見習、神麻嗣子。彼女は以前保科が関わった事件で彼、そして美貌と才能をあわせ持つ、能解匡緒警部とともに超能力に関係した事件を解決したことがあるのだ。今回の超能力は、人に暗示をかけて意識を操作するハイパーフィプノティズム。家に出られなかったのはその暗示のためだという。果たして暗示をかけて犯行を行った人物は誰なのか。三人の大胆な推理は事件を解決することができるのか。
SFの設定をそのまま使って本格パズラーをやってしまうという作者おなじみの手法であるが、本シリーズでは着物に袴にお下げ髪という神麻嗣子たち探偵役の造形が面白く、出張調査員見習が超能力の解読をし、あまり売れないミステリ作家がパズラーの謎を解くというバランスもよい。二転三転する真相解明も、主人公の視点で書くということを貫いているだけに納得のいく展開である。ハイパーフィプノティズムというあまりなじみがない能力を持ってきているのが効果的。今後も読むのが楽しみなシリーズである。
(2002年11月14日読了)