読書感想文


猛虎なり 阪神タイガース記憶に残る14人の男たち
高橋繁行著
洋泉社
2002年12月9日第1刷
定価1600円

 ルポライターである著者が、最も印象に残る阪神タイガースのプレイヤーについて取材し、プロというものの持つ素晴らしさを描きあげている。
 小山正明、若菜嘉晴、遠井吾郎、鎌田実、藤村富美男、吉田義男、竹之内雅史、濱中おさむ、金田正泰、ジーン・バッキー、ウィリー・カークランド、山本和行、藤本定義、川藤幸三、八木裕。故人あり現役あり。いずれもプロ意識を持った個性派ばかりである。
 著者は野球の専門家ではない。だからこそ、素人の視点で取材をし、読者にわかりやすい表現を心がけている。さらに、ことさらドラマチックに盛り上げようとするのではなく、ユーモアを交えながら、取材した人たちの肉声をそのまま伝える。そこにあるものは、プロ中のプロに対する敬意である。
 若菜の理論的な捕手論、名セカンドとうたわれた鎌田が今でももともと守っていたショートへのポジションへのこだわりを持っていること、常に誤解を余儀無くされていた金田の人間性など、作者は丹念な取材から意外な一面を引き出している。古いファンから若いファンまで、タイガースを愛する人にはぜひ読んでいただきたい好著である。
 ご愛嬌は、著者が自ら書いた漫画ルポ。決して絵がうまいわけではないが、不思議な味がある。プロの漫画家では書けない面白さかもしれない。

(2002年12月12日読了)


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