14年ぶりの復刊。親本の富士見ファンタジア文庫2冊分を1冊に収録している。
26世紀、木星を材料にした人工的な惑星が15作られ、地球人はそれぞれの星に植民していた。その中の一つ、ザイオンでは自治政府主席のアレッサンドロ・ディアスが地球政府から独立するという宣言を出した。ただちにこれを鎮定しようとする地球軍との間に戦争が勃発する。ネッド、ペトロフ、リュー・リン、デュカの4人の若者は、地下水路を利用して反政府ゲリラとしてささやかな抵抗を始める。ザイオンの名門、リビエール家の長男、ギイは冷徹な計算で全てを利用して太陽系までも我が手におさめようという野心を持っている。その第一歩として彼が選んだのは、ディアスの暗殺であった。かくして惑星ザイオンは地球軍の傀儡である「純白党」とネッドたちの革命勢力「深紅党」を軸に、激しい混乱の舞台となっていく。
圧政に対して若者たちが革命を行う。作者の世代の「夢」ではなかったか。本書では、作者が「若者」に託したメッセージを強く感じることができる。上からの指示に唯々諾々と従うような人間になるな、自分の頭で考えて行動せよ……。本書の親本が刊行された頃中高生であった読者も、いまや30代。社会人となっているはずだ。果たして彼らは作者の当時発したメッセージをどのように受け止めたのだろうか、等といらぬことを考えてしまった。なぜならば、ここで語られるメッセージは、現在の若者に読ませるにはかなり古びて感じられるからなのだ。本書を読んで育った世代が、作者の作った設定を使って新たな物語を作り上げている現在、本書の価値はそういった作家の根っこがどこにあるのかを示す貴重な資料というところにあるのでは、と感じた次第である。
三村美衣の「ヤングアダルトは同時代性のもの」という言葉を実感してしまった。
(2002年12月22日読了)