ナンパに明け暮れる大学生ケニーは性病をうつされてしまう。その性病とは、男性の体内に卵子が吸入されて疑似子宮が発達し妊娠してしまうというとんでもないものであった。堕胎するには子どもの母親の承認が必要だ。彼は自分が妊娠したころセックスした女性に検査を受けさせなんとか母親を見つけようとする。ところが胎内から蹴りあげてくる自分の子どもの感触に彼の心は揺らいでいく……。
妊娠した男性が次第に母性に目覚めていく「ウーマンズ フィーリング」。婚約しようとい相手がいながらヴァーチャル世界の女性と恋に落ちる男を描いた「愛のイデア」。無性種同士で同棲をする主人公が、相手の気持ちに不満を抱き「愛」とは何かを様々な立場の人々に問いかけていく「天使たちの夜」の3編を収録。登場人物はそれぞれに重なっていて、連作シリーズという形になっている。
SFの設定を使い「愛」とは何かをわかりやすく問いかけた異色作。こういうコミカルなタッチの短編も書けるのかと驚かされた。伝奇的な設定のミステリを読んだ時に、この人はまとめ方がうまいなあと感じたことがあったが、本書はそれがいい形で現れているといっていいだろう。ここで問われている愛は「性」というものの役割とは何かを問うものであり、こういうのを「ジェンダーSF」というのだろうか。
人が10人いれば10通りの「愛」の形があるのだろう。それを、SF的な設定を使って巧みに切り取ってみせた作者の手際のよさを強く感じた1冊である。レディース・コミックという発表媒体のせいかやや深みに欠ける部分があるのに物足りなさを感じないわけではないのだが。まあ、そこらあたりは読者層を考えるとやむを得まい。
(2002年12月24日読了)