読書感想文


ダーティペア 独裁者の遺産
高千穂遥著
早川書房
1998年8月31日第1刷
定価1000円

 WWWAの新人トラブル・コンサルタントであるユリとケイのコンビは、独裁者の没後、新政府のできた惑星アムニールに派遣された。そこには独裁者が残した謎の〈遺産〉があり、独裁者の治世下で育ちいまだに忠誠心を保ち続けている〈皇帝の息子たち〉と新政府が対立する内戦が続いていた。独裁者の別荘であったスペースコロニーにたてこもる〈皇帝の息子たち〉に敢然と立ち向かうダーティペアたちは、ついに独裁者の〈遺産〉を発見する。その恐るべき秘密とは……。
 ダーティペア完結後、インターネット用のコンテンツとして企画された作品だが、ネット上では日の目を見ず、結局は印刷媒体で登場したといういきさつがある。
 ストーリーとしては、第1作『ダーティペアの大冒険』と『ダーティペアFLASH』の間の時期を描いたものとなり、シリーズでおなじみの宇宙生物クアールのムギとの出会ったいきさつが語られている。アイデアの核となる独裁者の〈遺産〉や、ダーティペアの派手なぶっこわし方などはところどころ意表をつき、実に楽しく読める。ただ、それ以上の快感や驚きを与えてくれるかというと、結局は第1作の世界をそのままなぞったものでしかなく、物足りなさは残る。いってみれば、長年のファンへのサービスというところになるのかもしれない。

(2002年12月25日読了)


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