シリーズ第4巻。事実上の完結編。
ロチェスター財団が経営する完全寄宿制のお嬢様学校に奇病が蔓延した。WWWAはなぜか医学トラコンではなく犯罪トラコンのダーティペアを派遣する。ケイは講師として、ユリは生徒として学園に潜入するが、学園は外部から連絡を遮断され、生徒や職員は続々と行方不明になる。そして登場する謎の怪物の群れ。救援にやってきた財団の私設軍隊も怪物に襲われて半数以上を失ってしまう。ダーティペアのコンビとムギはメインコンピュータに潜入し、怪物の正体を探る。その怪物の正体を教えてくれる古代のメッセージを受けた彼女たちは、無事だった生徒や職員たちをメッセージに従って避難させるが……。
本書では、作者はSFの面白さをたっぷりと詰めこんだ上で、余韻の残るラストでシリーズを締めくくっている。本書にはファースト・コンタクト、バイオハザード、スペースオペラのエッセンスをダーティペアという設定で展開したらどうなるかという試みがなされている。どんな強敵に対しても怯むことのない二人組の痛快な活躍を満喫できる1編なのである。
スペースオペラの本家アメリカでは女性ヒーローとして「生け捕りカーライル」のシリーズがあるが、女性という面を十分生かしたものにはなってはいなかった。しかし、作者はユリとケイという対照的なキャラクターを主人公として配し、一人称の語り口などを活用しながら主人公が女性であるからこそ中和される大活劇を描いてみせた。発想の転換の勝利である。そして、その先駆者としての役割を果たして永い眠りにつくことにさせた。シリーズの掉尾を飾るにふさわしい強敵と戦わせ……。SFにひとつの時代を築いた傑作シリーズだったと、断言してもよいだろうと思う。
(2002年12月30日読了)