読書感想文


プロ教師の見た教育改革
諏訪哲二著
ちくま新書
2003年1月20日第1刷
定価680円

 著者は「プロ教師の会」の代表。文部科学省の推進する「ゆとり教育」に対する批判という形で、文科省の役人たちや多くの教師の信奉する(と思われる)西欧近代合理主義への幻想を批判している。つまり、「学ぶ主体」である子どもたちにもともと「学ぶ意欲」が備わっているという前提で行われる新カリキュラムや、「個」の尊重によりよき市民を育成できるとする教育言説を考え直せというわけである。著者はジャパンローカルの土壌で育ったものが、西欧近代合理主義を真に理解することは不可能であり、限界があると主張している。
 ならば、どのようにすればよいのか。そのビジョンを著者は示さない。示しているのかもしれないが、本書からそれを読み取るのは難しいといわざるを得ない。確かに、キリスト教をバックボーンとした西欧近代合理主義は、宗教的背景をもたない私たちには完全に理解することはできないだろう。しかし、著者の主張する「ジャパンローカル」の実態もまた、本書ではわかりにくい。
 本書はタイトルの通り「プロ教師から見た教育改革」は確かに示されており、その言説の背景にあるものも明らかにはなっている。しかし、そこから先の展望がはっきりしていないのである。「ジャパンオリジナルな知的主体」を育成することを望むと書かれてはいるが、その「ジャパンオリジナル」の像がぼやけているためにせっかくの批判が生きてこないうらみが残るのである。

(2003年1月25日読了)


目次に戻る

ホームページに戻る