地縁血縁関係から、明治維新を経て近代化が進む中で「社縁関係」といえるものがうまれてきた。そうやってできた組織とはなにか。成功する組織、失敗する組織の差はどこにあるのか。組織の中で人はどう生きていくべきか。
バブル経済まっただ中の時期に書かれたもので、組織というものの性質をわかりやすく書いてはいるのだが、どうも表層的で鋭い分析や新しい発見というものがない。組織というもののもつ危うさを実感としてとらえられない時代だったのだとしかいいようがない。
したがって、本書は、そういう時代背景を頭において読んだ上で、社会全体に厳しさのない時には、それを解説する本の内容もまた甘い観測のものにならざるを得ないという事実を示してくれている。
もっとも私は今の厳しい構造不況の時代に生きる高校生たちの参考になるところはないかという観点で読んだため、本書で示された組織と個人の関係については現在の状況ではあまり参考にならないと感じた。だいたい組織とはなにかということは書かれていても、それが個人の人生にとってどのような意味を持つのかという視点は、序章と終章で触れられているだけなのである。表題のつけ方はうまいが、内容がそれにともなっていないのである。
バブル経済の時代とは、つまりはそういう時代であったのだなあと、妙なところで感慨を覚える一冊であった。
(2003年4月3日読了)