読書感想文


上方学
福井栄一著
PHP文庫
2003年1月20日第1刷
定価571円

 「上方落語」「上方文化」などなど、関東に対して使われるこの「上方」という言葉だが、実際にはどのあたりを指すのか。また、「近畿」「関西」とどう違うのか。著者は、古い文献からその地域の定義を明らかにする。そして、都のある地域を指すこの「上方」の歴史や文化を、奈良、京都、大阪の順に探っていく。上方の芸能、文化について代表的なものをあげながら、「はんなり」「まったり」「じんわり」をキーワードにとかく下品で騒々しいイメージから「上方」を解き放っていく。
 数多くの文献や資料をもとに「上方」というものの実態をていねいに解説していく姿勢に好感を持った。ただ、中世から近世までについてはかなりくわしく書かれているのに、近代以降に関しては、そこまでたどりつかなかったという印象が残った。明治以降の「上方」について解き明かしていく第2弾をぜひ書いてほしい。そうすれば「上方」の全体像をつかむことができるだろう。地元の者はもちろん、他の地方の(特に関東地方)人たちにもぜひ読んでもらい、テレビなどで作られた上方像を払拭してもらいたいものである。

(2003年4月20日読了)


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