ミヤコ蝶々と親交の深かった人々にインタビューをし、その人間像を浮かび上がらせようとしたもの。最後に入院していた病院の主治医、最初は子どもとして引き取り後に父の籍に入れて弟とした唯一の家族。インタビューに選んだ相手は他の演芸関係の本ならば思いもつかない人物が多く、もと新聞記者らしい着眼点ではある。
しかし、地の文とインタビュー部分がいつの間にかごっちゃになってしまっていたり、全体の構成に工夫がなくただ次々と取材相手の言葉を並べるだけで山がなかったりする。肝心な部分の事を知っている人からは取材もしていないので、隠された謎の部分が見えるようで見えなかったりと、一人の人物の実像を描くには著者の力量が不足しているように思われる。せっかくいいソースをつかんでいるだけにもったいない。
(2003年5月8日読了)