京都新聞に連載されたまんがエッセイの単行本化。新たにガイドマップなどが書き下ろされている。
京都在住の著者が、自分の近所を歩いてみたり、名所旧跡をたずねてみたり、ライヴハウスにいったり、手作り体験をしてみたり……という具合に見聞したものを、漫画で表現する。その視点は、まさに「虫の目」。少しの風の動きをキャッチし、素直にそれを受け止める。その味は朴訥かつ飄々。著者の手にかかると、見慣れた街角も新しいものとして受け止められるようだ。
また、京都の名所をくまなくカバーしているわけでないところも好感が持てる。これは観光者向けのガイドブックではない。初出が地元紙であることからもわかるように、京都という町に生活している人に対して「もう一度自分の近くを見回してみませんか? 新しい発見があるかもしれませんよ」と声をかけているのである。
コンピュータ彩色で目にどぎつい色の表紙が目立つ昨今だが、著者はあくまで手描きで彩色をする。そのため、微妙な色合いがうまく出ている。この色合いがいいのだ。
目に見える全てのものが好きになる。そんな気持ちにさせてくれる好著である。私は著者とは長いつきあいだが、その人柄がここにははっきりと表れている。
(2003年5月24日読了)