読書感想文


京都虫の目あるき みちくさスケッチ
おがわさとし著
とびら社
2003年5月6日第1刷
定価1800円

 京都新聞に連載されたまんがエッセイの単行本化。新たにガイドマップなどが書き下ろされている。
 京都在住の著者が、自分の近所を歩いてみたり、名所旧跡をたずねてみたり、ライヴハウスにいったり、手作り体験をしてみたり……という具合に見聞したものを、漫画で表現する。その視点は、まさに「虫の目」。少しの風の動きをキャッチし、素直にそれを受け止める。その味は朴訥かつ飄々。著者の手にかかると、見慣れた街角も新しいものとして受け止められるようだ。
 また、京都の名所をくまなくカバーしているわけでないところも好感が持てる。これは観光者向けのガイドブックではない。初出が地元紙であることからもわかるように、京都という町に生活している人に対して「もう一度自分の近くを見回してみませんか? 新しい発見があるかもしれませんよ」と声をかけているのである。
 コンピュータ彩色で目にどぎつい色の表紙が目立つ昨今だが、著者はあくまで手描きで彩色をする。そのため、微妙な色合いがうまく出ている。この色合いがいいのだ。
 目に見える全てのものが好きになる。そんな気持ちにさせてくれる好著である。私は著者とは長いつきあいだが、その人柄がここにははっきりと表れている。

(2003年5月24日読了)


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