球界にありながら利害関係の薄い著者が、プロ野球に対する苦言をはっきりと書いている。プロ野球界を牛耳る読売巨人軍に対する反対意見、私設応援団に対する直言、球界にたかるマスコミ人たちと、著者の鉾先は容赦なく向けられる。
ここには、野球によって育てられ、名伯楽三原脩の薫陶を受け、自分を高めていった著者のプロ野球への恩返しという気持ちが込められている。ジャイアンツにしがみつく長嶋茂雄に対してもその舌鋒はゆるめない。
ただ一点、私が著者の意見で賛成できないのは、ドーム球場に関する部分だけ。著者はドームを快適だと賞賛するが、甲子園の浜風を感じながら観戦する心地よさは、閉じられた空間のドーム球場では得られないものだ。
それ以外の点に関してはおおいに共感できるし、よくぞ言ってくれたと拍手を送りたくなる。著者は、現在はまだ明言できない暗部についても、死後に公開するように家族に伝えてある手記があると書く。一種の恫喝ではあるけれど、著者にそうまで思わせる原因を作ったのは球界に関わる人々なのだ。本書は球界への警鐘である。関係者にこそ本書をじっくり読んでほしいものである。
(2003年5月23日読了)